三日坊主日記

チェコ留学に関する事を飽きるまで続ける予定。つまり、飽きたらやめる。

チェコのサッカー

Jリーグが開幕するも、新生名古屋グランパスは見事に開幕ゲームを落とす予測通りのスタートを切った。今期の目標は優勝でもACL出場圏内でも無く、残留、よくて中位狙いであるのは言うまでもない。前線を数人出してでもバックラインの補強をすべきだと思うが、久米の考える事はよくわからん。

 

換気をしようと窓を開けたら、外からサポーターの声が聞こえ、今日が中断期間明けの最初の試合であると思い出した。チェコリーグは多くの東欧諸国のリーグと同様に冬期に1ヶ月ほどの中断期間を設けている。これは極寒の東欧において、プレーをすることが困難であること以上に客足が遠のくことが大きな要因であると考えられる。

 

チェコのサッカーはウルチカパスと呼ばれる、精密なパスサッカーを持ち味としていることで好事家の間では有名である。これはプラハには狭い小道が多くあることから発展したと言われているが、実際のところはよくわからない。余談だが、効率的かつ計画的な社会を目指した旧社会主義国家が西側諸国と比べて、より魅力的な、非効率な、フットボールを志向したという歴史的事実も興味深い。西側諸国であるイングランドや西ドイツ、イタリア、そして北欧諸国のフットボールとは違い、チェコ、ユーゴスラビアといった一部の東側国家がパスサッカーを志向したのだろうか。東側体制成立以前に確立されたスタイルであったからなのか、それとも国家による保障から生まれたスタイルであるのか、フットボール歴史学者に問うてみたいものである。

 

チェコのナショナルチームは数年前に、ネドベド、ロシツキー、バロシュといったスタープレイヤーが全盛であった頃に欧州選手権にて2位の好成績を残したことから、東欧にしてはそこそこ知名度が高い。欧州選手権以降はドイツワールドカップに出場するも、組み合わせの不運(ドイツ、ガーナ、米国)や戦術の軸であったコラーの負傷もあり1次リーグで敗退している。その後、U-20カテゴリーでワールドユース準優勝など、ユースカテゴリーでは好成績を残すも、フル代表では目立った成績を残していない模様(というか、ここのところあまりサッカーを見ていなかったので知らない)。

 

昼間撮ったスタジアムの写真(クラブ名の上にあるマークはビール会社の名前。スポンサーでもあるのか、スタジアム内ではこのビールしか売られていなかった)

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20:15にキックオフなので20時頃部屋を出ると、首位にしてチェコ屈指の強豪クラブとの対戦であるからか、普段は誰もいないスタジアムからは想像出来ないほどの人で溢れ帰っていた。それどころか、警察車両がスタジアムの正面に10台ほど駐車されていた。また、機動隊のようなたたずまいの警官隊(数人に1人の割合でサブマシンガンを携帯)もスタジアムの外に少なくとも50人、警察犬も5匹ほどいた。以前、インターネットで、東欧のサッカーはJリーグと違い、女性や子供が気軽に観戦しに行くには危険すぎるという類の文章を読んだが、本当なのかもしれない。

 

スタジアムに来たまではよかったが、どこで当日券を入手可能であるのか皆目検討がつかない。仕方がないので、入場口付近の群衆が入場してからスタッフに尋ねようと思ったら、近くにダフ屋がいたので、ゴール裏のチケットを定価(150コルナ=約750円)で入手する。このスタジアムには以前、試合が無いときに訪れて(勝手に入って)以来であったが、やはり日本のスタジアムと比べるとかなり狭い。これはJリーグの基準で考えるとクラブライセンスがもらえないなどと思うも、そんな事情は協会の勝手な(以下自粛。

 

僕は16歳から18歳にかけて、名古屋グランパスの18歳以下のカテゴリーを何度も観戦してきたが、サッカーのプロリーグを生で観戦するのは実に15年ぶりのことである。完成度の高いプロリーグよりも、個人個人の差が激しいユースカテゴリーの方が面白いと思うのだが、それはまた別の機会に。

 

さすがはビールの国チェコ、スタジアムでも多くの観客がビールに、そしてソーセージに舌鼓を打っている。しかも、安い。ビールは0.5Lで30コルナ(約150円)、ソーセージも大きいのが50コルナ程度で売られていた。こんな寒い日に外でビールを飲んでトイレに行きたくなったらどうするんだと思ったら、ちゃんとそのへんもしっかりしていて、ちゃっかりそのへんでしてた。

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肝心なサッカーというと、ナショナルチームの大半が国外でプレーするなど、国内リーグから国外への主要選手の流出に歯止めが利かない現在でもなお、パスサッカーを貫いていた。それは首位であるスパルタ・プラハだけでなく、最下位であるボヘミアンズもまたパスサッカーの伝統を守り通していた。予想外にして感動的である。だがしかし、圧倒的な基礎テクニック不足と個人戦術の低さゆえに、その志向を完遂出来ていないという現状もまた浮き彫りになっていた。パスコントロール、トラップといった基礎技術の低さから、ミスを生み出し、オフザボールの少なさからもまたパスミスを生んでいた。それに加えて、利き足の逆足でのコントロールに不安を持つ選手が多いのか、サイドでボールを受けた際、一度、利き足でコントロールしやすい位置にボールを置き直してからプレーを再開するなど、カウンターのチャンスを自ら潰すシーンが目立った。プロの1部リーグというよりも、かつて見た高校サッカーの試合によく似てた印象を受けた。ただ、スパルタ・プラハの7番は小柄ながらもテクニックがあり別格だった。しかしまあ、このレベルでパスサッカーを志向するくらいならサイドに大きく開いて、サイドからFWに強迫観念的なまでにクロスを上げ続けた方が効率がいい気もする。守備戦術もマンマークでラインコントロールもあんまりうまくないし、電柱とスピードタイプを組み合わせたら簡単に突破出来そうでもある(ゲーム脳)。

 

東欧では女、子供はスタジアムで観戦出来ないと読んだと既に書いたが、スタジアムには多くの女性や子供の姿も見られた上に、そこまで危険な印象も受けなかった。それに加えて、機動隊風警察隊がスタジアム内にも大勢いたので何か起こってもすぐに対応出来そうだった。まあ、首位と最下位なんで暴動が起きる方がおかしいと思うが。しかし、発煙筒は本当に使われていた。旧ユーゴ諸国やギリシアリーグの動画を見るとやたらと発煙筒が使われていたが、チェコでも得点の度に発煙筒が焚かれていた。それどころか、後半、ファールで試合が止まった際にも発煙筒が焚かれていた。これはおそらく持参した発煙筒が余りそうだから使ったのだろうが、予想以上に盛り上がったせいか、発煙筒を焚いたスパルタサポーターはホースで水をかけられていた。それに対して空いたグラスを投げつけ応戦、再度水責め、とまるでコントのような茶番を繰り広げていた。アホ丸出しである。

 

試合は1-2でボヘミアンズの敗退で終わった。終了後、何故か発煙筒を焚いていたが、これも在庫処理であろう。

 

 

観戦中、ボスマン判決について書こうと思っていたが、ビールを飲んだせいで眠くなったので、ボスマン判決によって急加速したフットボールのグローバリゼーションとその影響に関してはいずれ書きたいと思う。